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東京都予算等に対する要望

令和5年度東京都予算等に対する要望

 

1 都市整備の推進に関する要望

(1) 無電柱化のさらなる推進

  無電柱化の推進については、当本部がこれまで一貫して、景観保持と都民が安心・安全に暮らせる街づくりのために都へ要望をしてきたところである。東京都においても、全国で初めての無電柱化推進のための条例を制定するとともに、無電柱化加速化戦略の策定に続いて、令和3年6月には東京都無電柱化推進条例等に基づく計画として「東京都無電柱化計画」を改定し、2040年代に向けた無電柱化の基本的な方針や目標を定め、知事のリーダーシップのもとに無電柱化整備を推進してきていると認識している。
 しかしながら、センターコアエリアの地中化は概ね完了しているが、依然として都道全体の地中化率は約44%(前年度は42%)にとどまっている。また、区市町村道のような狭隘な道路における無電柱化の整備は遅れているのが現状である。
道路を利用する都民から見ると、道路は連続してつながっており、引き続き、都道にとどまらず国や区市町村とも一層の連携を図り、地域住民の理解と協力を得ながら、東京の防災力を高め「セーフシティ」の実現に向けご尽力をいただきたい。
                           
(2) 首都直下地震等への備え               
 都においては、東日本大震災や平成28年熊本地震など全国各地で大規模な地震が頻発する中で、令和3年3月の「東京防災プラン2021」の策定に続き、令和4年5月に、これまでの様々な変化や最新の科学的知見を踏まえ、首都直下地震等発生時の被害の全体像を明確化するとともに、今後の都の防災対策の立案の基礎とするため、「首都直下地震等による東京の被害想定」を公表した。10年前の想定と比較し、耐震化が進んだことなどにより、死者数や建物の被害状況も少なくなっているものの、政治・経済の中心の首都における被害はこれまでの被災地と異なり甚大な規模になるとともに、その復興に要する費用も莫大なものと見込まれている。
 一方、国においては、平成26年3月には首都直下地震対策特別措置法(以下法」という。)に基づく首都直下地震緊急対策推進基本計画(以下「基本計画」という。)が閣議決定され、その後、減災目標を設定し関連施策の具体目標等を定めることを内容とする基本計画の変更がなされたが、依然として当該目標達成に向けて事業を具体的に実施する主体が明確になっておらず、また、首都直下地震対策に対する国の具体的な財政上の措置等は努力義務にとどまっている。
 今後、「首都直下地震等による東京の被害想定」を受け、課題の解決に向けた具体的な取組を早急に明確にしていただきたい。
 また、首都直下地震等に備えるにあたり、国が責任を持って防災力の更なる強化のための施策を着実に実施するよう働きかけるとともに、都をはじめ区市町村が進める首都直下地震対策が実効性あるものとなるように、国に対して具体的な財政上の措置等を講じるよう要望する。

 

2  住宅政策の推進に関する要望

(1)省エネ・再エネ住宅の普及促進のための支援の充実について      

 東京都では、2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減するカーボンハーフの実現に向けて、住宅関係団体と連携して省エネ・再エネ住宅の普及促進を進める「東京都省エネ・再エネ住宅推進プラットフォーム」を設立された。
  加えて、新築住宅に対しては、国が定める基準より断熱・省エネ性能を高めた「東京ゼロエミ住宅」の普及促進や太陽光発電設備設置義務化に向けた検討が、また、既存住宅に対しては、高断熱窓・高断熱ドアへの断熱改修等に対する補助金の拡充などが、それぞれ進められている。
  また一方で、国においても、建築物省エネ法が改正され、2025年を目途にすべての新築住宅について、省エネ基準への適合が求められるなど、住宅分野での取り組みの進展が図られる予定と聞いている。
  こうした状況の中、一般の住宅でのエネルギー消費量削減を進めていくためには、東京都と不動産業団体を含めた住宅関係事業者が一丸となり、各種施策を効果的に実施していく必要があると認識している。今後は、東京都が設置したプラットフォームの場等を通じて、迅速かつ確実に情報の共有、普及促進、機運醸成等の取り組みを図り、災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大等に向け、ゼロエミッション東京の実現を強力に推進されたい。

(2)住宅セーフティネット制度の普及促進に向けた支援         
 東京都は、住宅確保要配慮者の入居を拒まないセーフティネット住宅(東京ささエー ル住宅)の登録促進を進めており、とりわけ、要配慮者のみ入居可能な専用住宅については、昨年度末に策定した新たな東京都住宅マスタープランのなかで、2030年度末までの登録目標を3,500戸と設定し、昨年度末現在で642戸の登録となっている。目標達成のためには、不動産事業者を通じて、貸主から制度の理解や協力を得ることが必須である。
 そこで、東京都などにおいて、貸主等へ補助制度などのインセンティブを設けており、当団体においても、広報誌などにより会員向けのPRへの協力などを行っているものの、制度の理解や登録は十分には進んでいない。
 その要因として、各種補助を活用して専用住宅に登録した場合、専用住宅として10年間維持する必要があることや礼金・更新料等を受領できないといった制約があることに加え、入居が要配慮者に限定されることによる空室リスクがすべて貸主の負担になるなど、貸主にとって本制度の魅力を感じられないことが考えられる。
さらに、区市町村ごとに、導入している補助制度や居住支援協議会等の不動産相談の窓口の設置など、取組が異なることにより、制度がわかりにくく、理解が進みづらい部分があると考えられる。
 以上のことから、貸主にとっても賃貸住宅の経営者として制度を活用できるような、魅力ある住宅セーフティネット制度にするよう国に働きかけるとともに、支援策の充実や、制度の違いや地域の実情などを踏まえた、きめ細かい啓発活動に対する協力について、都に要望する。

(3)既存住宅流通の活性化に向けた取り組みについて 
 東京都は、令和4年3月に改定した「東京都住宅マスタープラン」において、目標の 1つに「良質な住宅を安心して選択できる市場環境の実現」を掲げ、既存ストックの有効活用を図っていくこととしている。
平成30年6月から、消費者の不安を解消し安心して中古住宅を売買できるよう、不動産・建設業者等からなる事業者グループの登録制度を開始しているが、中古住宅流通の活性化が十分に進んでいるとは言い難い状況である。
 既存住宅を、消費者が安心して選択できるような魅力あるものにしていくためには、 新築時から維持管理期、売買時までの全体を通じて、住宅の品質及び性能が確保され、取引時にそれらが明らかになり、金融機関を含めてその価値が適切に評価されるような市場の形成が必要である。
 以上のことから、平成25年に国土交通省により策定された建物の維持管理状況等が適切に反映される建物評価手法がより広く活用されるよう国に働きかけること、及び、住宅の質の維持・向上が適正に評価され、都民のニーズに応じた多様で良質な中古住宅が市場に供給されるよう、更なる施策展開をすることを要望する。

(4)宅地建物取引業免許等申請手続のデジタル化について
  東京都では、本年2月に策定した、「未来の東京」戦略version up 2022で、「都民のQOL向上に向けて、あらゆる分野におけるデジタルテクノロジーの活用を強力に推進する」としている。また、本年3月に策定した「東京都住宅マスタープラン(2021-2030)」で「宅地建物取引業免許や宅地建物取引士資格登録などの申請等手続について、申請者の事務負担の軽減、利便性の向上と行政事務の効率化を図るため、国等との調整を図りながら、デジタル化を推進する」としている。
 一方、国においても、令和4年度予算決定概要の中で、「政府方針(経済財政運営と 改革の基本方針、デジタル・ガバメント実行計画等)に基づき、ポストコロナにおけるデジタル・ガバメントの実現に向け、対面・書面で行われている宅地建物取引業免許申請等をオンラインで実施するため、手続きの電子化を推進する。」としているところである。
 大臣免許、知事免許及び宅地建物取引士登録は、我々不動産業団体の会員企業の業務に密接に関係し、不可分の手続である。国と都でバラバラにシステム構築するのではなく、届出件数が全国的にも多く、大臣免許の経由事務や知事免許及び宅地建物取引士登録の現場を持つ都が、国としっかり連携して共通システムの構築に取り組むよう要望する。
 なお、システム構築に当たっては、不動産業団体や会員企業の意見をしっかりと吸い上げ、申請等様式及び添付書類の簡素化など、利便性をより高めると同時に、成りすまし防止を図り、安全安心なシステム構築を図られたい。

 

3 中小不動産業者への支援に関する要望
(1) セーフティネット保証第4号に係る指定期間の継続的な延長について
新型コロナウイルス感染症の拡大に起因して事業活動の自粛や縮小を余儀なくされたことに伴い、売上高等が減少している中小企業者を支援するため、令和2年から始まったセーフティネット保証第4号(突発的災害)の指定期間の3か月単位の延長により指定期間が令和4年9月1日までとなっている。しかしながら、未だ全国的に感染が続いており、収束の兆しが見られない状況である。当面の間は継続的な延長措置を講じられたい。

(2) デジタル化に向けて普及啓発やデジタル技術活用に必要な支援強化
不動産業界は、 DX時代の到来を受け、不動産テックに象徴されるようにAIやIoTによる技術革新が進んでいるが、多くの中小事業者から構成される中小の不動産事業者においては、持続的に成長していくためには、データやデジタル技術の効果的な活用により生産性を向上させ、競争力を強化していくことが急務となっている。
  こうした中、国では、新たに「デジタル枠」等を設けて、「IT 導入補助金」制度化により、デジタル化に資する革新的製品・サービスの開発等に必要な設備投資や、バックオフィスを効率化するためのツール導入等に対して、中小企業のデジタル化を推進している。
また、東京都においても、デジタル化を進めるために普及啓発や人材育成等の支援を行うとともに、デジタル技術活用に必要な経費助成などの充実を図り、中小企業の取組を支援しているところである。
 しかしながら、デジタル化を進める上で資金やノウハウなどの経営資源が不足しており、今後、デジタル化の取組をすすめるため、デジタル化の推進のための普及啓発や補助率のさらなる引き上げを図るなど、デジタル技術活用等に必要な更なる支援策の充実強化を都独自の施策の充実に加え国への働きかけの強化を要望する。